PROJECT

レアメタル事業部

レアアースグループ|2013年入社

筒井 翔太朗Tsutsui Shotaro

※個別連絡による業務の妨げを防ぐため、仮名にて掲載しております。

「新しい仕事」を作るのは、難しく、面白い。
市場を創造し、レアアースを世界に届ける。

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01

ヨーロッパ市場をめざし、
手探りのスタート。

「ヨーロッパで、レアアースをもっと拡販できないか?」
上司にそう伝えられた時から、筒井の長い試行錯誤が始まった。拡販を実現するためには、まったく新しい製品の市場に参入する必要がある。それを自分の力で成功させることに、大きな意義があることは間違いない。しかし同時に、それが簡単なことでないこともよく分かっている。そもそもどの国の、どの企業にアプローチすれば良いのだろうか。手がかりが何もない中で、ゼロからマーケティングを開始した。
「最初はもう、金の鉱脈や温泉を掘る時と同じ気持ちです。たとえばヨーロッパの特定地域に販売したいと思っても、我々には市場構造が日本市場の構造ほど分かりません。しかし調査する中で情報が集まり、レアアースの使用量や流通経路が少しずつ分かってきます。現地の商社などの協力を得てレアアースを販売できそうな企業を何とか見つけ、電話やメールでアポを取る。そのように手探りでアプローチしていきました」
そもそも、レアメタル事業部が扱っている「レアアース」とは何か。経済産業省のホームページを見ると、「31鉱種あるレアメタルの一種で、17種類の元素(希土類)の総称」と説明されている。代表的なものでは、電気自動車など次世代自動車の磁石に使われるネオジムという元素が知られている。レアアースの産出量において世界一を誇るのが中国。その中国で採掘されたレアアースのうち、一部の種類のものを日本で加工し、純度の高いレアアース製品としてヨーロッパに輸出するというのが、筒井たちの計画である。品質面で定評がある日本製品の優位性を活かすため、品質基準が厳しいことで知られる医療機器市場にねらいを定めた。「必ず勝機があるはず」と信じ、さまざまな企業にコンタクトを取ったところ、ある国の医療機器メーカーから「ぜひ話を聞きたい」という前向きな反応が返ってきた。

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02

ここを掘れば、
きっと何かが出てくる。

現地の医療機器メーカーへの具体的な提案活動が始まった。
何度かヨーロッパを訪れて提案を行った後、今度はメーカー側が日本を訪れ、実際に製造現場を見学。その後、レアアース酸化物のサンプル出荷を行ったところ、しばらく経って評価の結果が送られてきた。筒井のもとに突然届いた一通のメール。開いてみるとそれはサンプル評価の合格を伝えるメールだった。
「『次のステップに進みたい』という言葉を見て、思わずガッツポーズしました。ゼロから可能性を探った結果、実はその市場が自分たちの手の届く場所にあった。それが分かったことに喜びを感じました。上司や同僚も一緒に喜びましたよ」
レアアースを購入して日本企業で製品化し、欧州企業に納入する。高純度で品質の高い製品を作ることのできるメーカーは世界的にも少なく、筒井たちの提案が、原料の調達先を広げたい欧州医療機器メーカーの思惑と一致する結果となったのだ。
何もなかった場所に、新しい商売をつくる。その面白さは、筒井が長い間求め続けてきたものである。豊通マテリアルに中途入社する際に期待したのは、スピーディーで手応えのある仕事ができること。自分の判断がビジネスの成果を左右するような責任のある仕事がしたい。そんな思いを持って転職した。
「仕事のやりがいを期待する一方、豊田通商グループの一員になると定型業務をこなすことに忙殺されてしまうのかな、と懸念していたことも事実です。でも、いざ入社してみたらまったく違いました。新しい商売を見つける努力を続けると、『ここを掘れば何かが出てくるかもしれない』という鉱脈のようなものが見つかる瞬間があります。次々にアイデアを試すうちに、いろんな情報が自分のところに集まるようになります。社内の別の部署や、親会社の豊田通商とも垣根がないので、『こんな新しい商材があるんだけど意見を聞かせて?』といろんな人から声をかけられます。そのようにグループ全体で柔軟に連携しながら新しいものを生み出せることが、豊通マテリアルの魅力だと感じています」

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03

インド産レアアースを
世界に届ける。

挑戦意欲に満ちた筒井の仕事ぶりを伝える上でもう一つ紹介したいのが、インド産レアアースの販売事例である。インドでのレアアース製品の製造はそもそも、日本とインドの政府間協力を背景にした一大プロジェクトである。レアアース製造の市場を中国がほぼ独占する中、中国以外の供給ソースを確保することを目的に、豊田通商は2014年にインドでのレアアース酸化物の商業生産を開始した。
この工場で生産されたレアアース製品の販売を担うのが、豊通マテリアルのレアメタル事業部だ。インド産レアアース製品の主な販売先は自動車業界。ネオジムという元素が次世代自動車の磁石に使われることはすでに紹介した通りだが、鉱山から掘り出されるレアアースはそれだけではない。
「レアアースのビジネスって、牛を一頭丸ごと買うようなものなんです。たとえば牛を一頭買いした時にサーロインが食べたくても、ミノやタンなど他の部位もついてきますよね。それと同じで、鉱山からはさまざまな元素が出てくるので、ネオジム以外の元素もしっかりと売り切らなくてはなりません。そこが難しさでもあり面白さでもあります」
インドの鉱山で産出されるのは主に、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジムという4種類のレアアース。この中でも筒井が特に力を注いでいるのが、プラセオジウムの販売である。プラセオジウムとはセラミクスの顔料となる元素で、黄色タイルの顔料として使われる。主な販売先は、スペインのメーカーだ。この案件でも、ゼロから市場を調査し、売り先を探すところから取り組みをスタートさせた。

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04

直接会わなければ、
感じられないことがある。

売り先を見つけるためには、まず市場を知ることから始めなくてはならない。輸出通関統計やマーケットリサーチリポートなどを活用したマーケティング活動の結果、スペインで年間約300トンのプラセオジウムが使われていて、そのほぼすべてを複数の特定企業が購入していることが分かった。それら企業は顔料メーカーで、タイルを製造する際にプラセオジウムを使用している。これらの企業と交渉を重ねて関係を築き、販売を軌道に乗せることに成功した。
営業担当者の腕の見せ所となるのが、相場の変化を見通した売買である。プラセオジウムの相場価格が今後上がっていくのであれば売り急ぐ必要はないが、下降するなら早急に売り切る方法を考えないといけない。ただ、そうした売り買いはあくまで、顧客の意向あってのもの。顧客が必要とするタイミングで、お互いに納得のいく売買を成立させるためには、日ごろからの密接な関わりが不可欠となる。
「大事なのは、『Face to Face』のコミュニケーションです。直接顔を合わせて会話すれば、お客様が何を考えているかを知ることができます。『興味がないよ』と言っていても、質問がたくさん出るようなら私たちの提案に関心を持っているのかもしれません。直接会った時の肌感覚が重要なヒントになります。私が2、3か月に一度ヨーロッパを訪れるのは、そうした言葉以外のものを感じ取るためです」
筒井の海外出張日数は、年間で60日から70日。一度ヨーロッパに行くと、1~2週間かけて10社以上の顧客を訪問する。スケジュールの調整がつけば、懇意の担当者と一緒に食事に行くことも多い。年齢や肩書に関係なく、その人自身が持つスキルや人柄で人を判断するのが、ヨーロッパの人々の魅力だと感じている。
「2週間かけてヨーロッパ各地をまわると、さすがにヘトヘトになります」
と言うが、それでも一人でも多くの顧客と会うためにスケジュール調整の努力をする。自分の力でさまざまな“出来事”を生み出し、人との関わりを深めていくこの仕事を、心から面白いと感じているからだ。次の未知なる出来事を求め、筒井の挑戦は続いていく。

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